「出勝」の読み方は諸説あります。当方は、イズカツ、デクカツ、デカツの3種をよく目にします。おそらく、名前の頭2文字を取る流派、本人同士の呼び方を重視する流派、実際の字面を素直に読む流派に分かれているためでしょう。

当方はイズカツ派なのですが、これはそもそも、「出」という漢字の読み方が難解なことに端を発した問題なのではないか、と先日ふと思い至りました。

 

出る(デる)は、元々は出る(イヅる)でした。『日出処の天子』を思い出してください。

(イヅミ)と語源を同じくしているのでしょう。泉は出づ水(イズミ)です。水が湧き出ているのですから。

出で立ち(イでタち)など、今日でもイ+ダ行下二段活用の名残があります。

『一寸法師』に登場するマジックアイテム「打ち出の小槌」。読み方は当然ウチデノコヅチですが、ローマ字にしてみてください。''UCHIDE NO KODUCHI'' 何か気になりますね? ''IDE'' そう、本来は、「打ち出での小槌」(ウチイデノコヅチ)だったのです。

時代が下るにつれ、余分に感じた日本人により、イは省略されるようになります。

 

出久をイズクと読むには、古語の知識が必要となります。幼稚園児で漢字を読めたかっちゃんは天才ですが、普通のいじめっ子だったとしても、小学生になればデクと読めると指摘したことでしょう。

緑谷家の両親は国語が得意なあまり、うっかり難読であることを失念していた可能性があります。

 



ちなみに、対義語の「入る」も、似たような状況にあります。

入る(ハイる)は、元々は入る(イる)でした。蘇我入鹿(ソガノイルカ)を思い出してください。普段から耳目に触れる、入り口(イりグチ)に、イ+ラ行四段活用が残っています。

「ハイる」を調べると、「這入る」という字が出てきます。本来は「這ひ入る(ハいイる)」、四つん這いで入る時にハイると言いました。段々範囲が広がり、今では入る=ハイるが主流となりました。

タイクカン←なぜか変換できない から分かるように、同じ音が続く場合、今も昔も、つい省略してしまいます。

 

 

同音の類義語が多く、その上、漢字まで似ていることが多い日本語。そもそも大和言葉に漢字を当てた点で、この問題は必然でした。

 

現代語から語源に思いを馳せるのは、いささか不思議な気分ですね。