ヒロアカは主人公はもちろん、他のキャラクターたちも設定がよく練られていて、群像劇的でかなり面白いです。

 

 ところで、ヒロアカのヒロインは麗日さんですが(※トガヒミコは敵なので除外します)、ヒロインにしてはとてもガッツに溢れた、ヒーローらしいキャラクターですよね。

 これは、ヒロイン人気を上げるための、堀越先生の策ではないでしょうか?

 

 人質になったりして迷惑を掛けることのある、姫ポジションのヒロインキャラクターは、女性人気が下がりがちです。また、弱い女性像にはフェミ的なアンチも発生します。しかし少年漫画とはいえ女性読者の多い時代、ヒロイン人気が下がると、ストーリー展開にさえ影響が出かねません。

 ヒロアカは、姫ポジションとヒロインポジションを分けることで、この難題に対処したのではないでしょうか。

 かっちゃんは2度人質になり、主人公デクや平和の象徴オールマイトを危険に晒しました。囚われの姫ポジションと言えます。

 その上、性格言動にも難があるため、かっちゃんにはアンチも多いです。

 しかし、ハイスペック男子であるため、女性ファンは多いです。ご存知の通り、姫ポジだからこその腐女子人気も絶大です。
 また、万が一アンチばかりでファンの少ないキャラクターになってしまっても、ヒロインではなくライバルキャラなので、ストーリー展開上、さほど問題ありません。作中でも「人気出なそ」と言われ、世間から誹謗中傷されている描写もあります。
 現実世界でもアンチが多い方が、リアリティが出て良い、とすら堀越先生は考えているのかもしれません。そして編集スタッ腐は、かっちゃんに固定ファンがつかないはずがないと、作品ファンのある程度のかっちゃんアンチを許容しているのかもしれません。

 

 ヒロアカは敵にも色々と事情があったり、ヒーローにも問題があったりして、善悪の難しさを感じさせる作品です。

 かっちゃんは、恵まれた子どもでした。アッパーミドル程度には裕福そうな家庭で、優しい父と美人の母に育てられ、強い個性と高い身体能力と突出した知能を持っています。子どもらしく残酷で、スクールカースト最上位者らしく高慢な態度であったかっちゃん。憧れのヒーローの変わり果てた姿に自責、自尊心が削り取られていきます。
 井の中の蛙であったことも相まって、かっちゃんは相対的に地位が下落しています。
 ここに勧善懲悪的なカタルシスがあります。いじめられっ子デクの小公女物語である分、余計にそう感じる仕組みです。クソナードがシンデレラしていく中で、かっちゃんは緊縛描写ばかりです。

 さて、少し前には、「小説家になろう」「ムーンライトノベルズ」で悪役令嬢モノが流行し、近頃は悪役令嬢が逆にザマァする展開も大流行しています。

 

 デクにとって憧れのヒーローであったかっちゃんが、姫とライバルの悪い所取りのような状況のまま終局を迎えるとも思えません。
 そもそも姫とライバルは一見すると共通項がなさそうで、一人のキャラクターに詰め込むには無理があるように思える属性です。しかし少年漫画においては、どちらも主人公を奮起させ、ストーリーを動かす二大キーパーソンです。スラムダンクで例えると、桜木花道をバスケに導いた晴子さんと、花道の負けん気を刺激して急成長させた身近な天才流川のように。
 デクはかっちゃんに憧れ、否定されて生きてきました。そして運命のあの日、ヒーロー精神を開花させたのも、かっちゃんがヘドロ緊縛されていたのが原因です。
 かっちゃんを救けるためなら、デクはヒーローからの制止も校則も気にしません。デクはプロヒーローへの道を断たれるとしても、かっちゃんのヒーローになるでしょう。前科があるから間違いありません。

 「クソを下水で煮込んだような」性格、そう評した上鳴くんは、今ではA組中もっともかっちゃんと親しげです。大変な暴言を吐いた相手を受け入れたかっちゃんの意外な度量の広さはもちろん、上鳴くんの心境の変化も興味深いところです。クソにも下水にも、人間は近寄りたがりません。本当はクソではなかったのか、それとも良いクソ(堆肥)だったのか。あるいは上鳴くんがクソにも美点を見出せる人種なのか。
 クソクソ言って失礼しました。

 当方は、かっちゃんと上鳴のシャブい友情のような大逆転劇があることを期待しています。

 井の中の蛙大海を知らず、されど空の高さを知る。己に勝つ。ヒロアカでは特に、名は体を表します。かっちゃんの両親は良い名をつけました。しかし雄英入学前は、その持ち前のハングリー精神は鬱屈の元になっていました。頭の良いガキ大将で、誰もが認める才能マン。その上ストイックに鍛える彼にとって、モブしかいない折寺は狭すぎたのです。
 敗北によって泣き、在り方に悩み。傷付くかっちゃんが綺麗という当方の趣味はともかく。
 無敵のヒーローではなくなったかっちゃんは、生来の競争心が剥き出しになり、今はまだトラブル続きの問題児です。
 しかし期末試験ではデク、仮免試験では上鳴くん、補習ではショートと協力することができました。爆発的成長を遂げるかっちゃんは、いずれは更なる飛躍をするでしょう。

 かっちゃん、爆豪勝己を推しましょう!Plus Ultra!